@phdthesis{oai:kanagawa-u.repo.nii.ac.jp:00013825, author = {秋永, 薫}, month = {}, note = {Thesis or Dissertation, 脊椎動物の腸管は、消化吸収を担う消化管上皮構造と高度に組織化し嬬動運動を担う平滑筋による筋構造を有する。発生過程において腸管の消化管上皮がその面積を拡充する際には、腸管は伸長しつつかつ同時に固有のパターンで巻いて折りたたまれ、左右非対称な形態形成を行う。筆者は、高い透明性をもつアフリカツメガエル初期幼生を用いて、「幼若な腸管の形態形成にはその平滑筋のactomyosin系の時空間的に制御された収縮活性が必要である」との作業仮説をもとに実験研究を行った。  平滑筋特異的actin(SM-actin)の分布と配向を可視化するために、whole-mountのツメガエル幼生をサンプルとして抗—SM-actin 抗体による免疫染色を行った。その結果、ツメガエル初期幼生の腸管においてSM-actinの発現領域が発生段階依存的に拡大していくことを見出した。さらに、腸管の長軸(伸長方向)に直交する横断方向に腸管平滑筋がまずは配向し、次いで腸管の軸に沿った長軸方向に腸管平滑筋が配向することも発見した。更に、こうして生成された腸管平滑筋がつくる縦横の格子には、腸管の巻きの中心のみで異方性(anisotropic)を示す捻じれが生じることも新たに見出した。actinと対をなすmyosinの配向を、SM-actinと同様に免疫染色により可視化した。活性化した状態のmyosinを検出する抗リン酸化myosin軽鎖抗体を用いた免疫染色により、ツメガエル正常胚のmyosinについては、SM-actinの場合と同様に腸管において横断方向にリン酸化myosin陽性細胞が配向し、次いで腸管の軸に沿った長軸方向にリン酸化myosin陽性細胞が配向した。リン酸化myosin陽性細胞の縦横の格子にも、抗-SM-actin抗体で染めた場合と同様に腸管の巻きの形態形成の中心のみで異方性を示す捻じれが生じていた。2つの抗体で染まった細胞は、SM-actinが主要な平滑筋マーカーであることから、共に腸管平滑筋細胞であると思われる。これら二つの相互に符合する発見は、捻じれによる機械的な力が腸管の左右非対称な巻きの形態形成に関与していることを示唆している。次に、myosinII ATPaseの阻害を通じてactomyosinの相互作用を阻害するBlebbistatinをツメガエル後期胚から初期幼生期にかけて投与した。その結果、腸管は巻きの形態形成の程度が弱まるか、左右相称に背腹方向のみに蛇行し螺旋状には巻かなくなった。  上述のwhole-mountの実験系ではBlebbistatin投与による他の組織への副次的な影響で腸管の形態形成が阻害されたにすぎないとの虞があった。そこで筆者はin vitroで腸管の巻きの形態形成を評価するモデル培養系の作出を行い、これに成功した。それに先立ち、最初にいわゆる半胚の作成により、腸管の形態形成への影響の評価を行った。神経胚期から尾芽胚期にかけてのツメガエル胚は胴部を二つに切断しても数日間は生存する高度な傷口修復能力を備えている。この性質を活かして、以下の3つのパターンで切断した半胚を短期間培養し、腸管形態形成を評価した。前頭部を切断しかつ心臓を残した胚では、98.5%の胚で腸管は正常にst.46の巻き方で巻いた。頭部とともに心臓も除外するように前胸部も切断した胚でも21.1%は途中まで正常に巻いた。頭部と尾部の双方を切断した胚では、一部の個体で途中まで腸管が巻いた。これらの結果から腸管の巻きの形態形成はある程度自律的に進行することが分かった。  以上のように、筆者が新規に開発した腸管原基の外植体の培養結果からは、ツメガエル幼生の腸管の巻きがかなりの程度、他の器官との相互作用無しに進行することが明らかとなった。そこで、次に単離腸管だけで巻く器官培養の系を作出することを試みた。腸管が巻き出す直前の発生段階であるst.41のツメガエル胚から腸管を単離し、CO2非依存培地を用いて通常の気相下で培養した。その結果、外植体に巻きの形態形成を誘導することに成功した。このことから、invitroで単離腸管が組織自律的に巻くことが分かったといえる。この筆者独自の腸管外植体培養系において薬剤投与実験を行った。actin重合阻害剤CK-666、myosinlight chain kinase阻害剤ML-9、calmodulinアンタゴニストW-7の3薬剤をそれぞれ投与することでactomyosinの収縮を阻害し、外植体への影響を評価した。いずれの薬剤投与群でも、巻きの形態形成を行う外植体の頻度が対照群に較べて有意に低下した(いずれもp<0.01)。また、細胞骨格の集積に関与するROCKに特異的な阻害剤Y-27632を投与した単離腸管は全く巻かなかった。重要なことは、whole-mountの実験でも投与したBlebbistatinを単離腸管に浸漬処理すると、単離腸管の巻きの形態形成は阻害された。  以上の器官培養系の実験結果から腸管の巻きの形態形成においてactomyosinの関与は非常に濃厚になったと判断したので、筆者は次に腸管の巻きを司る細胞間シグナル伝達経路を探索することにした。筆者はここでツメガエル後期胚—幼生期の腸管において発現している分泌因子Wntのシグナル伝達経路に注目した。Wntリガンドの分泌を阻害する阻害剤Wnt C-59を投与したところ、単離腸管が巻く頻度が低下した。また、whole-mountでWntシグナルの細胞内経路のうち古典経路のみを阻害するCardionogen-1を投与した所、ツメガエル幼生の腸管の巻きは弱まるか、停止した。これらの結果から、腸管の巻きの形態形成にWntシグナル伝達経路が関与していることが示唆された。  本研究は、(1)in vivoでのSM-actinやリン酸化myosinを発現する腸管平滑筋の分布の観察、(2)胴体部半胚での腸管の形態形成の評価、(3)阻害剤投与を組み合わせた腸管外植体のin vitro培養系…の3つの階層の実験を有機的に組み合わせてツメガエル初期幼生の腸管の形態形成の機構を解析した。得られた一連の実験結果から、腸管が巻き始める初期幼生期のツメガエル腸管ではactomyosinの相互作用依存的に腸管が折りたたまれて巻くことが判った。腸管平滑筋が時空間依存的に格子状に配向し、そして捻れることが、腸管の折りたたみを駆動することも判った。本研究の一連の実験結果からは、巻きの形態形成はかなりの程度腸管自律的に行われることも明らかとなった。初期幼生期でのactomyosinの相互作用により生じる収縮力が、筋肉性器官である腸管の正常な巻きのパターンの確立に不可欠であることが本研究により明らかとなった。, In vertebrates, gut coiling proceeds left-right asymmetrically during expansion of the gastrointestinal tract with highly organized muscular structures facilitating peristalsis. In this report, we explored the mechanisms of larval gut coiling morphogenesis relevant to its nascent smooth muscle cells using highly transparent Xenopus early larvae. First, to visualize the dynamics of intestinal smooth muscle cells, whole-mount specimens were immunostained with anti-smooth muscle-specific actin (SMactin) antibody. We found that the nascent gut of Xenopus early larvae gradually expands the SMactin-positive region in a stage-dependent manner. Transverse orientation of smooth muscle cells was first established, and next, the cellular longitudinal orientation along the gut axis was followed to make a meshwork of the contractile cells. Finally, anisotropic torsion by the smooth muscle cells was generated in the center of gut coiling, suggesting that twisting force might be involved in the late phase of coiling morphogenesis of the gut. Administration of S-(-)-Blebbistatin to attenuate the actomyosin contraction in vivo resulted in cancellation of coiling of the gut. Development of decapitation embryos, trunk'torso'explants, and gut-only explants revealed that initial coiling of the gut proceeds without interactions with the other parts of the body including the central nervous system. We newly developed an in vitro model to assess the gut coiling morphogenesis, indicating that coiling pattern of the nascent Xenopus gut is partially gut-autonomous. Using this gut explant culture technique, inhibition of actomyosin contraction was performed by administrating either actin polymerization inhibitor, myosin light chain kinase inhibitor, or calmodulin antagonist. All of these reagents decreased the extent of gut coiling morphogenesis in vitro. Taken together, these results suggest that the contraction force generated by actomyosin-rich intestinal smooth muscle cells during larval stages is essential for the normal coiling morphogenesis of this muscular tubular organ.}, school = {神奈川大学}, title = {Study on the gut coiling morphogenesis in Xenopus larvae}, year = {2021} }